THE HIDY ROD COMPANY
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メディアからの抜粋

メディアからの抜粋 アングラーズ・ジャーナル Vol. 3, No. 4 エド・イングル「ケーンカレント」より ハイディロッドは、透明で涼しい9月のある日、グースクリークを釣るためのロッド。

 ロッキーマウンテンの遅い春。私はグースクリークという名のちいさな川を釣っている。この名前を出すことができるのは、理由がある。ロッキー周辺にはたくさんのグースクリークがあって、私の指す川を見つけだすのは難しいと思ったからだ。私はその川を、もう25年も釣っている。

 今は、角の立った鋭い光が、風景を切り開いている。25年もの間見慣れた風景も、9月の光の中だと明るく、鮮明に、新しく見える。  私はジム・ハイディの7フィート半、3番ロッドを使っている。これは、グースクリークのような川のために作られたものだ。この時期、川幅は6メートルに満たない。水は透明で、水位は低い。プレゼンテーションは近くに、正確に落とすことが必要だ。#18のロイヤルウルフを、プールの流れだしや落ち込みの回りの白泡に沿って流すのだ。ドラッグを避けるため、近くに投げ、ティップを高く保ち、フライをリフルに流す。

 ハイディのロッドは、この種の釣りを優美にやってのける。そのルーツはE. C. パウエル。過去60年間、西海岸を中心とするユニークなセミホロー構造のバンブーロッドを開発したパイオニアだ。ジム・ハイディのロッドも、パウエルによるセミホロー構造の伝統を踏襲している。

 セミホローデザインを採用することによる軽量化の効果は、ビッグロッドでは明らかだが、私が手にしている7フィート半、3番のロッドではもっと繊細なものだ。あなたはまず、フォルスキャストの時に気づくことがある。ラインは流れるように前後し、スラックが入らない。

 さらに、キャスティング・ストロークにタイするロッド全体の反応も違う。全重量がソリッドと比較して軽いので、独自のテーパーと組み合わせられたハイディのロッドはより速いアクションになり、キャストは明るく、切れの良い感触を持つようになる。もちろん、その効果は4番、5番、そして6番とロッドが重くなるに従って強調されてくる。 ***  そのロッドを実際に使う数日前、私は近くの公園の芝生でキャストしてみた。近くを投げるのには、夢のようなロッドだった。とても繊細なティップにより、ロッドは早い時点から曲がり始め、ティップからラインをほとんど出さなくてもそれを感じることができる。グースクリークのような川で、まさに必要なことなのだ。

 このロッドは、実際のトラウトフィッシング場面で多用する10メートル以内のキャストでは、まったく力を要求してこない。このロッドが3番であることを忘れず、オーバーパワーにならないように心がければ、15メートル以上のキャストも可能だ。実際のところ、私は至近距離から18メートル周辺まで、スナップをきかせたシングルホールを使って投げてみたが、何の問題もなかった。このロッドを使って12メートル以上投げようと試みるなど意味がないと思うが、フライラインを振り回すことに快感を覚えるキャスティングマニアなら、20メートル以上飛ばすこともできるだろう。しかし、それはほとんど犯罪だ。このロッドの美点は、至近距離のキャストを楽しくすることにあるのだから。あなたは、それが曲がるのを感じる。ロッド自体が美しいループを描き、リーダーだけがキャストされる。  3番ロッドに、これ以上なにが必要だろうか? ***  ジム・ハイディはこう言った。「私が信じるものとは、繊細なティップ、ホロー加工、ファーストすぎないロッド。難しいのは、近くを釣っても楽しいロッドを作ることだね。」

 ハイディは、3本目のロッドでE. C. パウエルが開拓したホロー加工を試してみたという。

 「一度ホローのロッドを試してみると、もう振り返ることはできなかった。ソリッドに比べて、利点が多いからね。」  チャンバード・ロッドとも呼ばれるセミホローのロッドは、竹の外側のパワーファイバーを残しつつ、内側のピス部分を削り取ることで製作される。これにより、全体の重量が軽くなる。各チャンバーの大きさは、1本のロッドでも場所によって異なり、その間はブリッジあるいはダムによって隔てられている。正確に設定されたダムの部分において、ピスはそのままに残されている。各ストリップを接着する際には、ダムの位置がぴったりとマッチして、チャンバー隔壁となるわけだ。

 「私が設計したホローイングマシンは、必要なパワーファイバーを残しながら、好きなだけピスを切削できるようになっている。それに、ダムの幅も自由に調整できる。私は、3から4.5ミリあたりにするのが良いと思っているけれど。できるだけダムの幅は小さくしつつ、接着した際には完璧に合わさることが求められる。これによって内部強度が上がり、アクションにデッドスポットがなくなるんだ。」

 セミホローのロッドを製作する際にもっとも難しいのは、ストリップを接着する時だという。グルーが多すぎると、せっかく抜いたチャンバーが埋まってしまう。グルーが足りないと、剥がれや強度不足が起こってしまう。

 「難しいよ。ぴったりの量のグルーをハケ塗りしなきゃならないから。自分のグルー処理がうまくいっているか確認するためには、まずロッドを作って、それを割り、内側がどうなっているのか見るしかないんだ。駆け出しのロッドビルダーにとって、自分が作ったばかりのロッドを切って中を見るなんて、いちばんやりたくない事だけれど、ね。」

 ハイディのロッドは、フェルールとその周辺は、ロッドのモデルによって長さは異なるものの、ソリッドのままにしてある。これは強度を保つためだ。

「3ピースの場合、先端の1本を除いてホロー加工をする。技術上、もっと肉を抜くことはできるけれど、ロッドが曲がるためには重量も必要なんだ。」

 ホローロッドを作る境界線は、3番だとハイディは言う。「3番は、ソリッドでもホローでも作れる。2番になると、抜くだけの肉がなくなってくるんだよ。」

 ハイディは、いわゆるスタンダードモデルを作ってはいないが、お客が特別なリクエストをしない限り、決まったガイドラインの中でロッドを製作する。そして、私が使った3ピースの7フィート半は、彼の作品の典型である。  彼はブロンドケーンを使用する。それは今の好みであるが、過去にはより強い焼きの入ったロッドも作ったことがある。ブルー加工されたニッケルシルバーのリールシートは、スライディングバンドと、ストレート・バットキャップとの組み合わせ。ハイディは自分で金具を削り出す。メープル材のスペーサーとバンドのフィット感は、私が今まで経験してきた中でも最高レベルだった。ぐらつきは一切ない。スペーサーは、リールフットが乗る部分をフラットに加工してある。

「メイプルはかなり持っているけれど、ウォールナットも時には使う。もし希望のスペーサー材をお客さんが持ち込んできた場合は、まず確認してから使うようにしている。できればハードウッドがいいね。」

 ハイディが好むグリップのサイズはとても小さいので、私は最初、自分には合わないと思った。私の手は大きいからだ。しかし、リング12個から作った14cmのグリップの快適さには驚いた。親指のあたりの太さが絶妙で、軽量ロッドによく見られる短いシガーグリップと比較して、すばらしい感触だった。

 リールシート金具に加え、彼はハンドル上に装着するリングスタイルのフックキーパーも自製している。ストリッピングガイドはパーフェクション・スタイルのものを使用。ガイドラップの色はさまざまだ。私が使ってみたロッドは、ブラックのティッピングが施されたブラウンだった。シグネイチャー・ラップは、3本の細いブラックで、グリップから約6センチの位置に配されている。2本のうち片方のティップトップには、区別のためにブラックのティッピングが施されている。

「ガイドのラッピングに標準色は決めていないけれど、好きでない色の組み合わせは受けつけない。普通は、レッド、グリーン、ブラウン、あるいはクリアのどれかだね。」

 ラッピングはエポキシでコーティングされる。グリップの先端部分にもエポキシが塗られる。

 ロッドの1面にはHidyと署名が入っている。ロッドのテーパーも表すシリアルナンバーは、別の面に入る。シリアルにHの記号が入るロッドは、ホロー加工が施されたものだ。

 ハイディはスーパーZフェルールを使用するが、顧客の好みによってブルー加工も施す。ノードの配置は、バットとミドルは3x3であるが、ティップは強度のためにスパイラルとなる。彼のロッドからは、静かなエレガンスというものが感じられる。装飾は控えめで、そのぶん目はケーン自体の美しさに行く。ハイディは、つねにロッドの性能を第1に考えているのだ。

「ジム・シャーフとマリオ・ウジニッキからロッドビルディングを習うことができて、とても幸運だったと思う。どちらもホローのロッドを作っていて、ケーンロッドがどんな性能を持つべきか、よく理解している人たちだ。つまり、フライロッドってのはラインをキャストし、フックをかけ、魚とやりとりをする道具なんだよ。」

 ハイディは、フルタイムのバンブーロッド・ビルダーとしては珍しいハンドプレーン派だ。

「ハンドプレーニングを採用すると、より質の高いロッドができると思うんだ。現代のベベラーは医療器具レベルの精密さになってきているとは言うものの、それに竹を差し入れると誤差が生じる。ハンドプレーンほどの精度はない。ハンドプレーンは、一瞬も気が抜けない。」と彼は言う。

 ハイディにとってハンドプレーニングの重要性は、プロセスを通じてつねに作業のチェックを行うことができる点だ。  「今の機械を使えば、正確な三角形と正確なテーパーができるかも知れないけれど、何回かカンナをかけるごとに光にかざしてみて、それぞれのファイバーがどうなっているか確認する、というのがいいね。僕のロッドを見てみれば、リールシートの真下に来ていた繊維は、ティップトップの先端に来る。行程を通じて、つねに確認しているからね。機械は100%正確な三角形を削れるけれど、繊維の1本までは追うことができない。」

 ケーンロッド製作への彼の情熱は、フライフィッシングに長く関わってきた彼の家系から来るのかも知れない。ハイディのいとこは、もはや古典といえる「ウエットフライのタイイングとフリンフを使った釣り」を書いた、ヴァーノン・「ピート」・ハイディ。この本は、ウエットフライ使いであったジム・ライゼンリングのタイイングや釣りに関する考え、行動、そしてテクニックを説明したもの。そしてジム・ハイディ本人も、サンフランシスコのゴールデンゲート・アングリング&キャスティングクラブの筋向かいに、もう14年住んでいる。

「クラブでは、多くの腕利きたちを見てきたし、フライロッドのデザインに関する議論を聞いてきた。大手メーカーのロッドデザインにかかわっている男たちもよく現れた。なにより良かったのは、ロッドを持っていけば、すばらしいキャスターがそれを投げてくれて、私はその性能をチェックすることができた事だね。」

 キャストするときのロッドの感触という点にハイディがこだわるのも、そういった理由だ。

「お化粧も必要で、大事な事なんだけれど、リールシートはロッドの性能とは関係ない。つぎ込んだ努力の総量が、ロッドの性能となって現れるんだ。心がまえがしっかりできていないと、良いロッドをハンドプレーニングすることはできないよ。あなたが作り出し、表現してゆくものの質は、あなたが受けるインスピレーションと、あなたが持つ自信とにかかっているんだ。やろうと思ったら、15時間や20時間でロッドはできるけれど、僕が100時間をかけるのは、理由があるんだ。」  光が明るく、鮮明で、すべてが新しく見えるような秋の日、私のグースクリークで、ジム・ハイディのロッドを使って釣りをするのは完璧なことだと思えるのは、そんなわけがあるのだろう。 (エド・イングルはバンブーロッド狂、プロガイド、フライフィッシング本の執筆者である)


スティールヘッドにも、ハイディロッド。クラマスの魚。